[新人] 連結納税検討チームに配属された新人の遠藤です。宜しくお願いします。
[新人] 早速ですが先輩、連結納税の税額計算について、単体申告との違いについて教えてください。
[先輩] 簡単にいうと、「単体申告」(以下「単体」)というのは各会社ごとに所得と税金を計算して、申告書の提出と税金の納付を行うことです。現在親会社がやっている方法だね。「連結納税」(以下「連結」)というのは、企業グループ内の会社をひとまとめ、つまり「グループで1社」と考えることで、グループ全体で所得と税金を計算して各会社が申告書を提出し、親会社が税金の納付または還付を受けます。
グループは何でもいいというわけじゃなく「100%の支配関係」に限られるから、注意が必要です。あと、連結納税の適用は法人税だけで、事業税や住民税は適用されないよ。
[先輩] 試しに「単体」と「連結」の税額インパクトをシミュレーションしてみようか。親会社の所得が10,000千円、子会社の所得が△3,000千円だとする。単体だとそれぞれ税金を計算するし、連結では親会社と子会社を合わせて計算します。
次の表を見てごらん。

単体だと親会社と子会社が別々に計算するから、親会社の税額が3,000千円、子会社は所得がマイナスにつき税額0円で、グループ全体として考えると3,000千円の納付だね。でも連結では親会社と子会社を1つとして計算するから、2社の所得が通算されます。
通算後の所得が7,000千円で、かかる税額が2,100千円。
どうだい、連結の方が、税額が900千円も少なくなっただろう。これが、『連結納税』の1番のメリットなんだ。つまり、黒字と赤字の会社の所得が通算されるから、納税額が少なくなるんだ。
[新人] なるほど、流石先輩です。でも今の話だと、税金の納付や還付を受けるのが親会社だとすれば、子会社は何もしなくていいんですか?
[先輩] そんなことはないよ。単体では、各社とも確定納付法人税額を「未払法人税等」で計上するよね。連結の場合には、親会社だけが法人税の納付や還付を受けるのだから、親会社だけが「未払法人税等」を計上するんだが、子会社もやるべきことがあります。
さっきの表Aを見てごらん。子会社の税額が△900千円となっているよね。この△900千円というのは、「子会社は親会社から900千円もらいますよ」という意味なんです。
表Aの親会社の「税額欄」はどちらも3,000千円。でも単体では3,000千円は全額税金として国へ支払うけど、連結では2,100千円を国へ支払い、900千円は子会社へ支払う。つまり、子会社へ900千円の資金提供ができるのさ。この900千円を「連結法人税個別帰属額」というんだ。これについても仕訳の計上が必要で、具体的には次のようになります。

通常、親会社から子会社への資金提供は「親会社から子会社への贈与」ということで、親会社では寄附金課税されるよね。でも連結の個別帰属額の精算は、寄附金課税されることなく資金提供できます。余談だけど、もし精算が行われなかった場合には、「子会社から親会社への寄附」とみなされます。子会社がいったん親会社から資金提供を受け(表Aの900千円)、それを親会社へ贈与すると考えます。
これが原則なのだけれど、平成22年のグル-プ法人税制の創設で、100%グループ間の寄附金・受贈益はともに損金不算入、益金不算入となりました((注)平成22年10月1日以後に支出する寄附金、受ける受贈益について適用。同日前に支出する寄附金・受ける受贈益については、適用されない)。したがって、個別帰属額の精算については、実際に受払いを行わなくても、連結納税の所得計算には影響を及ぼしません。
[新人] それじゃ、平成22年のグル-プ法人税制の創設以降は、こんな仕訳もありってことですか。
まず親会社が子会社へ資金提供を行います。

[新人] 次に親会社が子会社から資金提供を受けます。

[先輩] そうだね、仕訳を起こすとすればそうなります。
<連結納税のメリット・デメリット>
[新人] なんか複雑ですね?ん~、今のままグループ法人税制でいいんじゃないですか?
[先輩] たしかに、グループ法人税制ができて、連結納税制度と重複している部分も多い。でも大きく異なる部分もある。じゃあ、連結納税制度のメリットとデメリットを見てみようか。
【主な連結納税制度のメリット・デメリット】


このメリットとデメリットの内容は、グループ法人税制にはないものだよね。特にメリットについては、連結納税制度を選択してこそのものだから、グループ法人税制が適用されるのとは、大きく違うんだ。
[新人] 国への納付/還付といい、親子間の個別帰属額の精算といい、親の立ち位置が難しそうです。それにグループ全体の所得からの欠損金計算。・・・早く先輩に追いつけるよう頑張ります。
<世界の連結納税>
[先輩] ところで、連結納税制度は日本だけでなく、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツなどの諸外国で採用されています。だから世界レベルでいえばポピュラーなものであって、決して珍しい制度ではないんですよ。
日本では2002年から制度が導入されたけど、最も古いのはアメリカの1917年導入。約100年前には導入されています。制度を大きく分けると、「所得通算型」と「損益振替型」があって、アメリカ、フランス、日本は「所得通算型」になります。もちろん、各国、適用要件や所得計算の仕方は異なります。例えば、日本では100%の支配関係だけど、80%以上とか95%以上とか様々です。その他にも、毎期任意適用とか、事業年度を合わせなければいけないとか、色々なケースがあります。
[新人] どの国も日本と同じだと思ってました。世界的に見れば日本の連結納税制度は比較的最近なんですね~。
[先輩] 日本の所得通算型は、所得通算以外にもキャッシュインパクトに影響するものがあるので、それは次回に説明しよう。
※.本記事は概要を伝えることを目的としており記述は法制度について完全に説明するものではありません。詳細につきましては最寄の税務署又は税理士にお問い合わせください
記事:朝日税理士法人、株式会社豆蔵 綿引和敏
掲載日:2012年4月5日